先日、アートフェアみたいなところでぶらぶらしていたら、アーティストの人に声をかけられた。その人は、服飾を専門にした現代アート作品を作っている人だった。よくよく話をしてみたら、その人は舞台の衣裳デザインも手掛けているという。私が舞台好きだという話をしたら、こんなふうに言われた。
「舞台好きの方が美術の展示をしている場所に来るって珍しいですね!」
たしかに、珍しいかもしれない。
舞台界と美術界は、意外なことに顧客層が違う(と思う)。

そういえば舞台界隈であっても、そのジャンルは細かく分かれていて、それぞれの顧客層は被らないことが多い。
小劇場好き、商業演劇好き、ミュージカル好き、落語好き、歌舞伎好き、クラシックバレエ好き、コンテンポラリーダンス好き、オペラ好き、クラシック音楽好き、などいろいろあるだろう。

私のもとには、とある公共ホールから自主事業(主催事業)のダイレクトメールがよく送られてくる。その公共ホールがたまに面白い演劇の自主事業をやってるから、私はダイレクトメールを受け取っている。しかし実際には、ダイレクトメールの中身の多くは演劇以外のもので占められている。落語のチラシやクラシック音楽のチラシも同封されてくるが、ほとんど見ようとしない。
見ようとしないというか、見てもよくわからないのだ。寄席もたまには聞きに行くし、クラシック音楽もたまには聞く。けど演劇ほど詳しくないので、一般的なチラシを受け取ってもぐっと来ない。演劇好きの私にこんなチラシ送ってきてもコストが無駄だよなぁと思う。

とそんな背景から、解決策を考えてみた。
目的は、様々なジャンルの自主事業を行う公共ホールが効率よくチケットを売りさばくこと。
(公共ホールが「効率よく」とか言っちゃっていいのかどうかの議論はおいておく。)

例えば、演劇、伝統芸能、クラシック音楽の3ジャンルを主催している公共ホールを事例に考えてみる。

過去の顧客ひとりひとりの購買データにラベル付けする


会員顧客データから、過去3年の間にチケット購入があった顧客のみを抽出する。そしてその顧客ひとりひとりの、「過去3年間の総購買公演数」「過去3年間の演劇購買公演数」「過去3年間の伝統芸能購買公演数」「過去3年間のクラシック音楽購買公演数」「最終鑑賞日」を並べる。

そして、以下のようにラベル付けする。

  • (A)過去3年間の総購買公演数
    • 12回以上…A3
    • 4回以上12回未満…A2
    • 1回以上4回未満…A1

  • (B)過去3年間の演劇購買公演数
    • 4回以上…B3
    • 1回以上4回未満…B2
    • 0回…B1

  • (C)過去3年間の伝統芸能購買公演数
    • 4回以上…C3
    • 1回以上4回未満…C2
    • 0回…C1

  • (D)過去3年間のクラシック音楽購買公演数
    • 4回以上…D3
    • 1回以上4回未満…D2
    • 0回…D1

  • (E)最終鑑賞日(全ジャンル)
    • 3か月以内…E3
    • 12か月以内…E2
    • 36か月以内…E1

例えばこんな感じ。

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セグメントわけしてマトリックスに落とし込んでみる


つづいて、AとE(総購買公演数と最終鑑賞日)、BとE(演劇購買公演数と最終鑑賞日)、CとE(伝統芸能購買公演数と最終鑑賞日)、DとE(クラシック音楽購買公演数と最終鑑賞日)のマトリックスをつくってみる。
そして各顧客を枠に当てはめてみる。
たとえば下記のAとEの例でいうと田中さんと山田さんは、A3かつE3にはまる。佐藤さんはA3かつE1にはまる。鈴木さんはA1かつE3にはまる。小林さんはA1かつE1にあてはまる。

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一方、BとEのマトリックスではどうか。
田中さんは、B3かつE3である。山田さんはB1かつE3である。

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各セグメント毎に対策を考える〜ホールにとっての優良顧客を見つける


AとEのマトリックスは、このホールにとってロイヤリティの高い顧客を探し出せる表だ。A3かつE3に当てはまる顧客は、多くの公演数のチケットを購入してくれており、しかも最近も買ってくれているので最も重視すべき顧客であると考えられる。田中さんと山田さんがここに当てはまる。

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しかし、佐藤さんはA3かつE1だ。ここにはまるということは、昔はいっぱい買ってくれていたけど、最近はめっきり離れてしまった顧客ということになる。佐藤さんが引っ越してしまってホールから遠くなったとか生活環境ががらっと変わったとか、競合他社に奪われた可能性が考えられる。
また、鈴木さんは購買回数こそ少ないが、最近見に来てくれたホットな顧客である。今後、優良顧客になる可能性もおおいに考えられる。
しかし小林さんは、購買回数も少なくて、見に来てくれたのもだいぶ昔である。小林さんは、もう無視していいと考えられる。

BとEのマトリックスでは田中さんは、B3かつE3である。山田さんはB1かつE3である。
この2人は、AとEのマトリックスでは優良顧客だったが、演劇に絞ると田中さんは優良顧客であり、山田さんはそうではないことがわかる。


実際の対策


たとえば演劇公演のチケットを売りたいとしよう。
そのときには、BとEのマトリックスにしたがって、各セグメントごとに内容を変えたダイレクトメールを打つのが良い。
B3かつE3の人たちに対しては、手書きでもいいぐらいの勢いで「あなたのための公演です!」というダイレクトメールを打つ。
B3かつE1の人たちに対しては、すでに競合に流れている可能性もある顧客であるため、どちらかというとご機嫌伺いな感じでダイレクトメールを打つ。
B2かつE3の人たちに対しては、彼らが前回見たであろう公演の思い出なども織り交ぜつつ、ホールのファンになってもらうべく2回目のホール体験を促すダイレクトメールを打つ。
B1かつE1の人たちに対しては、そもそもダイレクトメールは打たなくて良い。(コストがタダのEメールなどだったら話は別だが。)


これに加えて、総購買金額の軸を加えて、ひとりで複数枚購入する優良顧客を発見するなどもできるはずだ。家族や友達を連れてきてくれるいい顧客ね、みたいな感じ。
あとは、「演劇」と「伝統芸能」のマトリックスをつくって、演劇好きだけど伝統芸能は見に来ていない人を絞り込むことなどもできるだろう。演劇好きかつ伝統芸能初心者に響くようなダイレクトメールを作ればいいのだ。

そして上記の例では簡易的にそれぞれ3段階で区切ったけど、実務では5段階、7段階ぐらいにより細かく区切るべきだろう。

こういうデータベースマーケティングやいわゆるRFM分析って、もう公共ホールでは行われているのかな? そんなのジョーシキだぜとか言われたら若干恥ずかしいけど、あったらぜひ知りたい。なかったらちょーお手伝いしたい。へんなコンサルに依頼するより安くやりまっせ!