チケットガード少額短期保険の不使用チケット費用補償保険「チケットガード」というサービスがはじまっていたので調べてみた。
これは、演劇や音楽イベントなどのチケットを購入したけど行けなくなった、という場合に適用される保険商品である。

2011年8月29日ぴあ株式会社のプレスリリース「ぴあとチケットガード少短が、日本初! イベントチケット保険サービスをスタート」より。
ぴあ株式会社とミレア・モンディアル株式会社の100%出資子会社であるチケットガード少額短期保険株式会社(本社:東京都品川区、取締役社長:友岡勇次、以下チケットガード(株))は提携し、日本国内では初となる不使用チケット費用補償保険「チケットガード」のサービスを9月中旬に開始予定です。
尚、同サービスは、ぴあが保険代理店業務を担い、チケットガード(株)を引受保険会社として提供いたします。

どうやって加入するのか?

ぴあが代理店になっているので、オンラインのチケットぴあでチケットを購入すると、一緒に加入できる。一部入れないイベントもあるらしいが、先日たまたまぴあでバレエのチケットを買ったら画面に案内導線が出てきたので、多くのイベントで適用できるようだ。
条件としては、決済後72時間以内の申し込みが必要だ。ちなみに重要事項説明書を読むと、イベントの日まで6日をきった状態だと加入できない。公演まで6日を切ったライブのチケットもぴあで買ってみたら、確かにチケットガードへの導線は表示されなかった。

いくら支払うのか?

保険料の目安は以下の通り。

高いのか安いのか、妥当なところなのか。

いくら戻ってくるのか?

チケット代金分が保険金として支払われる。その他、たとえばコンビニ決済に要した決済手数料とかの分は支払われないと思われる。

どんなときに保険金は支払われるのか?

本人が病気で入院したり火事にあってしまってイベントに参加できなかったとき。家族が入院したので看病しなければならず参加できなかったとき。行こうとしたけど電車が2時間以上遅れたとき。裁判員に任命されちゃったとき。出張が入ったとき。一緒に行こうと思ってた人が上記理由で行けなくなっちゃったとき。
という感じ。これは私の解釈なので詳しくは重要事項説明書をご参照。

残業で行けなくなったときは支払われるのか?

演劇とかライブとかのチケットを無駄にしてしまう一番の理由は、個人的には「仕事が終わらない」ときである。チケット持ってるのに夜に急な会議入れられて抜けられないよこのやろうみたいなことがあるではないか。このようなときに保険金は支払われるのか?
残念ながらこういうときには支払われない。
国内の「宿泊を伴う」出張が入ったときには支払われるが、いつものオフィスで残業してたぐらいでは支払われなさそうだ。

保険金請求に必要なエビデンス一式を見てみると、少なくとも国内出張の場合は宿泊施設発行の宛名入りの領収書または交通機関発行の切符、航空券、搭乗券(半券含)が必要だそうですぜ。

イベントに行かれなかった方の業務出張  でご請求の場合

以下の1から1点および2から1点をご提出ください。
  1. 勤務先からの出張命令書 (コピー可) または 弊社書式の出張自認書 (原本)
  2. 海外出張の場合:旅券の当該出張における出入国押印ページ および 顔写真付ページ(コピー)
    国内出張の場合:宿泊施設発行の宛名入りの領収書 または 交通機関発行の切符、航空券、搭乗券(半券含) (共に原本)


家族4人みんなで行けなくなったときは支払われるのか?

例えば家族4人で何かのイベントに行こうとしてこのチケットガードに加入したとしよう。その後、お父さんが出張になったので家族全員イベントに行くのをやめたとする。このとき保険金は家族全員分でるのか?
残念ながら出ない。出るのは、お父さんの分と同伴者1名分だけだ。なので、パパは出張で見にいけないけど残りの3人はちゃんと見に行ったほうがいいということだね。パパかなしい。

控除対象になるのか?

ならない。
チケットガードに頼らず生命保険でさっさと5万円控除申告しよう。

結局お得なのか?

いろいろ考えてみたけど、チケットガードに加入して金銭的にお得になりそうな人ってあんまりいないのではないか。いやまぁ保険ってそういうものだけど。
パターンとしては、病気がちでしょっちゅう通院してる人か、しょっちゅう急な出張が入っている人にはすばらしい保険である。私も一時期、一カ月の間に5〜6回飛行機に乗る出張をしていて、大概1〜2日前にそれが決まるという生活をしていた。なのでその頃は全然予定が立てられないから演劇やライブのチケットを前売りでは買えなかったのだ。(だから当日券で突撃するクセがついた。)そういう人には需要ありそう。

あと、家族連れでイベントに行くときには、パパ分ぐらいはカバーできるというのもママ的にメリットかもしれない。チケット1枚だけ余っちゃってそれを誰かにあげるって、客席についてから微妙なよそよそしさになるものね。
しかし家族連れで何かのイベントに行くって、よくある話なのかな? 私は過去ウン百回と、日時指定のあるイベント(演劇やライブ)に行ってるけど、独身的には行くとしたら1人か2人だったので、実体験としてのその辺のニーズがつかみづらい。

そして最後にそもそも論だが、すてきな作品を提供する興行主としては、チケットの代金が回収できることよりも、客席が埋まることのほうがありがたいと思う。そりゃお金も必要だけど、お金ほしかったら芸術ビジネスなんてやんないよね。それよりも自分たちの作品を多くの人に見てもらいたいと思うはずだ。
だとすれば、チケット代だけが入ってきてお客さんは来ないなんてがっかりではないか。
だからチケット代をカバーできるこの保険はおもしろい商品だが、本当は見に行けなくなった時点で(空席が生まれた時点で)その席を販売できるような二重スキームになると、興行主からもありがたがられると思った。そんなことしてたら採算とれなくてもはや保険じゃなくなるか。むずかしい。