静岡から社会と芸術について考える合宿ワークショップ」という催しがあったので行ってきた。

場所は、静岡県静岡市にある舞台芸術公園や静岡芸術劇場などである。主催は、SPAC(静岡県舞台芸術センター)。

振り返れば13年前。高校二年生の私は、オープンしたての舞台芸術公園でシアターオリンピックを見ている。実家、愛知県豊橋市から2時間ほど在来線に揺られ、わざわざ静岡市まで演劇を見に来たのだ。

当時、静岡県のお金を大量につぎ込んで開催されたシアターオリンピックと、ともに建設された劇場群は、高校生の私にも充分すぎるほど印象的だった。

たしかに静岡で、良い作品が見られた。高校生の多感な時期にその作品を見られたことは確実に今の自分に影響を与えているし、とてもいい経験だったと思う。

しかし、「よくもまぁ演劇にこんなに税金投入するなぁ」と思ったのも事実である。高校生のくせにそんなことを考えた。

おかげで、当時のSPAC(静岡県舞台芸術センター)の芸術総監督、鈴木忠志について調べはじめ、鈴木忠志が関わっている雑誌「演劇人」を読むようになり、そこの特集に「特集:地域演劇と公共劇場」なんていうのが載っているのを見つけちゃったりして、次第に地域演劇と公的資金の投入、そしてアートマネジメントに興味を抱くようになるのである。

折しも、豊橋に演劇専門劇場をつくる話が盛り上がっていた頃で、地元でもそういうシンポジウムに顔を出したりしていたのだった。

(その後、税金で劇場を運営することの意義に興味を持った私は、「演劇人」の記事中で読んだ世田谷パブリックシアターの劇場評価について関心を持つに至る。大学生のときには、その記事を書いていたニッセイ基礎研究所の吉本光宏さんが非常勤で教えていた他大学の授業に潜らせてもらった。そして卒論も、経営学科なのに公共劇場の評価について書いた。)

そんな思い出深い、私の原点ともいえる静岡での「社会と芸術について考える合宿ワークショップ」である。これは行かねばならない!

ということで行ってきました。

(しかしよくよく聞いたら、この企画の言いだしっぺはぼくも旧知でお世話になっている平松さんでした。なんという世の中の狭さ……。)

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まずは舞台芸術公園内の劇場を見学します。
上の写真は楕円堂。
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上の写真は、野外劇場の有度。ここで13年前に、シラノ・ド・ベルジュラックを観たことを思い出す。

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静岡芸術劇場でお芝居を見たあとは、芸術についてワールドカフェを実施。
ワールドカフェ恒例のまとめかた、付箋はりはり。

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つづいて二日目は、公共について考える。
公共サービスと呼ばれるものは、何のために存在しているかから考え始めます。
そして、その目的は芸術が代替することで達成可能なのか、考える。

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そんなことを朝から晩まで喋り続け、二日目も夜が更けてきたときに、オープンスペーステクノロジー。最近ワークショップ系はめっきりご無沙汰だったので、オープンスペーステクノロジーなんて2年ぶりだよ! 芸術に対してとても真摯な人たちのマジな言葉をいっぱい聞く。
そして終わってからも喋りつづけ、日付が変わっても喋りつづけ……。

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三日目は、場所をアトリエみるめに移して、民間の小劇場スペースを見学して民間と公共との関係を考えてみた。


というような感じで三日間を過ごした。
様々な立場の人たちが集っていて、とても刺激的な時間だったと思う。

しかし13年前からの命題である「芸術にそんなに税金投入していいの?」という疑問に対する答えは、結局のところやっぱり答えを見いだせなかった。

公的なお金は、生きるか死ぬかの問題である福祉などにまず優先的に振り向けられるのがごもっともである。しかし私個人のことでいえば芸術がなくなると私は死んじゃうと思うので、私にとっては福祉と同じぐらいの意味がそこにある。
けれど、それをどのように一般社会のコンセンサスを得るため説明できるか、その言葉はやっぱり今回も見つけられていない。

逆に、申し訳ないことにいろんな人に議論を吹っ掛けまくったおかげで、それらを説明するための小手先の言葉をいかに自分が今まで覚えてきてしまったのかを自覚した。また、芸術支援なんて必要ないという立場の語彙を、不可逆的に自分がいっぱい知っていることも自覚した。

なので、これからもこのことは考え続けないといけないんだなぁと、再び思ったのです。スタート地点に戻った、のでした。

一緒に議論してくださった皆さん、ありがとうございました!