その人は言った。
「難しいねぇ。」

難しいのだ。本当に難しいのだ。
答えが出ないので、こうしてこの人に相談をしてみたものの、やはりその人も「難しい」と言う。すこぶる難しい。

正月早々、大学時代の友人(女性)と久々に会い、食事をしながら悶々と私の悩みについて話してみた。
でも「難しい」と言われ、私がその後どうしたらいいのかの答えは、結局でない。

先日、同い年の男友達から電話がかかってきて、「気になる女の子と会う約束がとれたんだけど、どこでデートしたらいいか分からない」と切り出してきやがった。「デートプランを一緒に考えて」というのだ。
はぁ? そんなの知らねーよ自分で考えろ、と思ったので、その場はてきとーにやり過ごした。しかし彼は、次の日も電話をかけてきてまた同じこと聞いてきた。「デートプランを考えてくれ」と。
私はそのときもまたその電話をてきとーにやり過ごしたのだが、続いてまたさらに次の日も彼は電話をかけてきた。「こういうの久しぶりでオレわかんないんだよ」とか言ってたので、今度は私もちょっと可哀想になって とあるアドバイスをしてみた。

そして、次の日は電話がかかってこなかった。自分でデートプランを構築したか、あるいはほんとに 私のアドバイスを受け入れたのかもしれない。

しかしだ。
私は思ったのだ。
いざ自分が逆の立場になったら、私はどうやってデートプランを組むのか。
いざ自分が気になるコを誘う立場になったら、どうやってデートプランを組むのか。デートプランなんて考えられないっすよオレ。
そもそもどうやって気になるあのコを誘い出すんですか。無理っすよオレ。

そんなこんなで、気になるあのコをどこかに連れ出す場合の「口実」について、大学時代の友人(女性)に相談してみたわけなのだ。
「どうやって連れ出したらいいの?」と。
するとその友人は「難しいねぇ」と答えた。

「お互いが社会人だと、時間を合わせることからして大変だからね。そこでさらに、相手を誘い出す口実が必要なんでしょ? 相手がこっちのことを気になってるのなら容易いけど、なんとも思ってないのならアポとるの大変だよね。」

そうなのだ。
社会人になっちゃうと、空いている日にはがんがん予定を詰め込んでしまう。男女問わず、周りはだいたいみんな、休みの日のスケジュールは随分前から埋めている。休日にアポをとるのは、なんとも難しい。
事実、私もつい先日、ある人とのアポを入れようと試みたが、まず相手の休日の予定を聞く前に自分の休日の予定が空いてねーよということがあって、何かと随分断念している。

さてそこで考えつくのが「平日の夜にアポを入れる」という選択肢だが、これもまた難しい。いや、仕事が終わる時間が遅いから無理、という話ではない。
キケンな大東京で、夜に会うなんて有り得ない、という話だ。東京の夜なんて、ちょー危険じゃないですか。

友人は言う。
「夜、彼女を誘って、彼女が帰り道で通り魔にでも会っちゃったら大変だしねぇ。」
「そうそう。」
私は頷く。
気になるあのコを危険にさらすわけにはいかないのだ。
東京の夜はキケンだぞ。

しかし友人が続ける。
「○○(←私の名前)が、彼女を家まで送り届けるというのなら話は別だけどね。」

な、気になるあのコを家まで送り届けろというのか! いやいや、それは出来ない。そんな気恥ずかしいことできないっすよオレ。
というか、そもそも──、私が彼女を家まで送り届けたところで、あんまり私が強そうに見えないから、防犯効果が無いのだ。

昔の話ではあるが、私が高校生ぐらいの頃、私だっていっちょまえに夜中に女の子を家まで送り届けたことはある。女の子を家まで送り届けるのは男の義務だよ偉いだろ、なんて思いながら。女の子がワルイヤツに絡まれないように、夜道を慎重に彼女の家まで送っていったわけだ。

しかし、だ。
ある日、その子を家まで送り届けたあと、一息ついて缶コーヒーを買い、我が家へ帰ろうとのんびりしていたら──そこでワルイヤツがあらわれたのだ。んで、たかられそうになった。「オラオラ金だせよ!」みたいなの。

その場は、当時演劇部員だった私の持ち前の演技力(?)で何とか逃げおおせたけど、慌てふためいて実際はガクガクブルブルだったので、手に持っていた缶から、中身のコーヒーがいっぱい飛び出して服が濡れちゃって大変だったよ。

というわけで、今度 夜中に女の子を家まで送り届けて、また絡まれたりでもしたら 改めて失態を犯しそうな気がする。怖くて、女の子を家まで送り届けるなんて出来ない。あー、こういうのをトラウマというのだね。夜中に女の子を家まで送り届けられないコンプレックス。

だから、気になるあのコを夜に誘うことも出来ない。

私はどうしたらいいのだろう。

最近、周りの同い年(年男・年女)が悶々と恋に悩んでいる。いろんな話を聞かされる。

「昨日ふられた」とか。
「お願いだからデートプラン考えて」とか。
「デート不安だから、後ろからついてきて」とか。
「私、絶対あの人に騙されてるんだけど、騙してくれるだけで嬉しい……」とか。

あー、しょーもない。しょーもないけどみんな恋する23歳。年男と年女。

というわけで、遅れましたが皆様あけましておめでとうございます。
今年は私は年男です。年男なので何かといろいろありそうですが、いい年にする予定ですので皆様あたたかい目でよろしくお願いいたします。