おそらく3年ぶりの再会だった。
先日、とあるカフェに入ったらたまたま友人が目の前に座っていたのだ。コンサルティング業界で働く彼は、超絶的に頭が回転しているのだが、世間話をしていたら突如、彼が思い描いているという新しいビジネスの話になった。なになにと訊いてみると、位置情報について喋りはじめるではないか。もそもそと鞄の中からパソコンを取り出したかと思えばいきなりプレゼンを始めるし。どうやら訊けば、もともとRFIDからはじまり、位置情報ビジネスを追っかけていたらしい。3年前はそんな話訊いたことなかったのに。

ということで、私も久々に最近の位置情報サービスについて書いてみようと思う。彼と以前に会った3年前(2006年の前半)、私はこんなエントリーを書いていた。

[nekodemo]地図情報サービスの明日はどっちだ──その1

[nekodemo]地図情報サービスの明日はどっちだ──その2

[nekodemo]地図情報サービスの明日はどっちだ──その3

[nekodemo]地図情報サービスの明日はどっちだ──その4(「街をつくろう」がおもしろい)

当時の論点としては、主にこうである。

  • 経緯度情報を不動産や飲食店などあらゆるものにくっつけていくと便利だ
  • 携帯電話にGPSがつき、位置情報をもとにしたサービスが実現しやすくなっているから
  • 情報検索だけでなく、携帯電話というデバイスをもとに、課金などにも可能性は広がっている
  • そして、経緯度情報を伴ったクチコミも広がりそうだ
  • 大手ポータルが経緯度情報を伴ったクチコミを収集する前に、ぜひ新興ベンチャーが情報を囲い込んでしまえ

で、3年経った今はというと……。
意外に位置情報サービスは伸びなかった。……反省。

もちろん徐々に進歩はある。

まず、やはり大手ポータルが位置情報を伴ったクチコミ(というかユーザージェネレイテッドなコンテンツ)を収集しはじめた。
例えば、Yahoo!Japanのワイワイマップ。ワイワイマップ上に、ユーザー自身が情報を書き込める。
googleも似たようなことをマイマップで可能。googleの場合は、経緯度情報を持ったPanoramioの写真がgoogle Mapに出てくるというようなところにまで進化。YouTube動画もマッピングされている。また、これら自社サービスの情報だけではなく、社外のサービス(食べログのレビューとか)も紐づくようになっている。(これは直接その情報が経緯度情報を持っているのではなく、一度googleの中のPOIと紐づいてから、それを地図上での検索に出しているのだが。)
他にも、ソニーグループのPetamapとか。

海外に目を向ければ、米国西海岸を拠点にYelpが躍進。位置情報というか地域情報のクチコミポータルだ。(ところで今日、森美術館のクリエイティブ・コモンズの講演会に行ったらスタンフォードの法律の先生がYelpに言及していた。最近Yelpの話題を聞かないなぁと思っていたが、やはり西海岸ではメジャーな存在なのだ。)

このように、位置情報サービスは徐々に拡大しつつある。
しかし根本的な問題として、「サービス」は出来上がりつつあるが、これらは未だ「ビジネス」に成り得ていないのが大変痛い。PVをたくさん稼いで昔ながらの「広告」ビジネスをするしかできないのが現実か。

国内の最近のヒットというと、「ケータイ国盗り合戦」があるが、これも

儲かるか、と聞かれると難しいが、でも楽しい。その中で儲かればいいと思っている

と言っちゃってる。(via大人がハマるケータイゲーム「位置ゲー」、その魅力とは

がんばっているのはナビタイムで、こちらは優秀な技術に加え、携帯電話の課金プラットフォームを使って個人からの小口のお金も徴収している。ナビタイムは、ルート検索でお金を集めていて、これはケータイ国盗り合戦のようなエンターテイメント的なものとは違うが、ひとつの事例としておさえておくべきだろう。ナビタイムが儲かってるかどうかは知らないけど、日本発で攻めまくっているのは頼もしい。ただ、これを「位置情報ビジネス」としてのイノベーションがあるものかと問われれば、難しい。今のところ、ゼンリンとかもやっている歩いて収集した地道な土地情報にGPSを乗せたものを売っているのであって、ここからさらに儲けどころを(内需で)広げるのにナビタイムも苦心しているのではないか。

位置情報は技術としては面白いし、いろんなことが出来るのだが、肝心のお金の出所がないというのが現在の状況だ。位置ゲーとしての国盗り合戦が、試行錯誤の中でがんばっているのは尊敬するし、彼らのもっともっとのブレイクを期待している。しかし、「広告」だけではないお金の取り方ができれば。。。

広告以外の収益源を確保しなければならない問題は、位置情報だけではなくウェブサービス全般に当てはまる。というか、最近ではメディア全般が抱える問題だ。

しかし位置情報は、位置情報という「リアル」に存在しているものが絡んでいるからこそ、そこが解決の糸口につながる何らかのヒントになる気がしている。

こんな話を3年ぶりに会ったコンサルタントと話していたのであった。