CSチャンネルのシアターテレビジョンが、「舞台」関連番組の放送を取りやめたことの波紋が広がっている。「舞台専門チャンネル」と謳っていたシアターテレビジョンが「舞台」を辞めるという大きな方針転換である。

私もかつてはシアターテレビジョンに加入するためだけにスカパー!を契約したこともあるくらいのユーザーだった。しかし舞台を映像で見ることに魅力を感じなくなって、いつしか契約を止めた。なので私的にはシアターテレビジョンがどうなろうが関係ないのだが、演劇ファンの端くれとして今回の問題を考えてみることにした。

教訓

今回のシアターテレビジョン騒動で、演劇人やファンがネット上でもシアターテレビジョンに対してぶーぶー言っている。
例えばナイロンのケラさんはこのように述べる。

いくらなんでも急過ぎだろバカふざけんな

との思いは禁じ得ないが、俺にバカふざけんなと言われて変更するのを変更するぐらいなら最初から変更しないだろうから、結論としては、もう二度と俺(達)の舞台をシアテレで観ることはできない。

キャラメルボックスの加藤さんはこのように述べる。

青天の霹靂。

現場の方々も当惑 していらっしゃる様子でした。

新しく代表になったという大塚隆一さんという方から、ようやく今日になって電話をいただきました。(以下一問一答が続く)

国内舞台中継の打ち切りを発表した今のシアターテレビジョンになってしまった今、もはやこの決定を覆すことは難しい。だからもはやどう騒いでも仕方ないとは思うが、今回の教訓は、「舞台中継はやっぱり儲からないんじゃないか」という積極的推測と、今後のためにも「あんまり演劇人は怒りを外に出さないほうがいいんじゃないか」という消極的ススメだ。

まず「儲からない」問題だが、舞台がそもそももうからない産業であることは明白だ。そこに映像というものを噛ましたシアターテレビジョンだが、結局儲からなかった。儲からないということは、見る人がいないということで、なんだ結局観劇人口少ないんだなぁということになる。(シアターテレビジョンの番組編成が悪くて見る人が少なかったのかもしれないけど。)

(地上派と違って、CSチャンネル事業者は、売上を広告収入ではなく個人からの視聴料に頼っている。シアターテレビジョン内の内訳は分からないが、総務省での資料によれば一般的にCSチャンネルは営業収益の50%程度が視聴料。)
通信・放送の在り方に関する懇談会資料より。

そして「あんまり怒らないほうが良いよ」というのは、他の放送事業者が舞台中継に及び腰にならないようにするためという理由だ。
「シアターテレビジョンにくし」みたいに言っていると、これから「舞台中継ってイイかも!」と思った放送事業者が「演劇人ってこわいんだ〜やっぱやめよう」とか思っちゃったりして。心情は分かるけど、ここは大人の対応で、「視聴者への不利益」を指摘するだけに留めましょう。バカとか死ねとか感情的なセリフは言わないように。

今回の問題の背景

ついでに、今回の騒動の背景を調べてみた。
シアターテレビジョンの番組編成の改変は、経営方針の変更がある。

2/17に日本ラッド株式会社がシアターテレビジョンの増資引受。それまでも日本ラッドが筆頭株主だったが、これで出資比率51%を超えて同社の連結対象に。

日本ラッドのIRによれば、シアターテレビジョンはこんな状態。

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この数字だけでは本当の企業価値は分からないが、まぁこの表面上の数字を見れば経営判断としては「舞台中継をやめる」というのはアリだと思う。(とか書いたらたたかれるのかなw)
59万人の視聴契約者のうち、完全に舞台ファンで単独契約しているユーザーと、他のチャンネルと一緒にパックで契約しているユーザーとを分類して、もし舞台中継を中止して舞台ファンが解約していっても勝算がある、みたいな考え方ができれば。

しかし今回の騒動の大問題は、視聴者へのお知らせが突然過ぎたことだろう。これは大きな経営ミス。(キャラメルボックスなどの劇団側については、契約がどうなっていたのか分からないので言及しない。)

さて、シアターテレビジョンをこれからも舞台専門チャンネルとして残したい人は、ここらでぜひ、親会社日本ラッドを買収してしまってはどうだろう。シアターテレビジョンを直接買いに行っても売ってくれなさそうだけど、日本ラッドならJASDAQだから頑張ればいけるんじゃないか。で、ニッポン放送を買うともれなくフジテレビがついてくる、みたいな感じでTOB。
日本ラッドのPBRは0.35倍。お買い得ということで、文句を言う前に買ってしまおう。

ま、小市民ファンだったら全部買うのは難しいので、そういう人は1単元だけ買って、日本ラッドの来年の株主総会に行って株主質問をするのも良いかもね。なんてたって、シアターテレビジョンは日本ラッドの連結だもの。