楽しいPVでおなじみ、割り勘アプリのpaymo



私も最近は飲みに行くたびにpaymoで割り勘している。
本日時点のMy残高は32,480円だ。

さて、このあいだはウェブ業界の友人と飲みにいって、paymoで割り勘をしようとしてみた。するとウェブ業界なくせに、そこにいる人たちはpaymoのことを知らないという。その場で紹介したらすぐにアプリのダウンロードや会員登録はしてくれたのだが、ウェブ業界にいるのにこのアプリを知らないとは意外だった。

一方で、銀行勤務の友人と飲みにいったときの反応は違った。銀行勤務の友人は、会員登録こそ手間取っていたが、paymoの存在自体は認知していて、「いつか使ってみたい」と思っていたそうだ。銀行勤務だからこそ、FinTech的なものには敏感なのだろう。



日本では、もともと銀行以外の事業会社は、送金業務をおこなうことが禁止されていた。しかし2010年に施行された資金決済法により、登録をしさえすれば事業会社でも送金業務が可能になった。
これはとても画期的な出来事だった。現代社会では、例えば給与が銀行口座に振り込まれたとして、それをATMから引き出さなくても、誰かの口座に直接振込をして何かの代金を支払う、なんていうことができる。現金を手にすることがないまま、入金され、出金されるのである。送金だ。
で、この送金は銀行にしかできない仕事だった。しかし資金決済法により、事業会社でもそれが可能なようになったのである。
たとえばスマホ以前から有名なPayPalは、むかしから日本に参入していたが、法規制により個人間で送金をすることはできなかった。私も随分前にシリコンバレーに視察に出かけたときにPayPalにもお邪魔したのだけど、アメリカでのPayPalは容易に個人間で送金が可能だった。あるいは州によっては銀行免許も持っていた。しかし日本では個人間送金ができなかったのである。アメリカでは銀行ネットワークがあまり整備されていないが故にPayPalが発達したという事情もあったのだが、ことインターネットの金融ビジネスの分野では、日本はガチガチの規制状態だなと思ったことを覚えている。

しかし資金決済法が施行された。その後、資金移動ビジネスをおこなう事業者が続々と登場してきている。LINE Payなんかもそうである。

資金決済ビジネスが拡大すると面白いのは、いわば財布をその事業者に預ける、ということと同義になる点だ。あるいはその事業者が発行したお札的な何かと同義のものを信用してお金を預けるという意味になる点だ。
例えば一万円札は、日本という国があるからその信用で取引に使用されている。これからどこかの資金決済事業者にお金を託すとなると、国家ではなくその事業者を信用してそこで資金相当分の決済なり送金なりあるいは保管をすることになるのだ。国家の機能を企業が担うことになる。新しい未来じゃないか。英語しゃべって仕事するとかそういう小手先の「グローバル化」ではない、金融という仕組みからの本当の意味のグローバル化である。

さて、前述のpaymo。ついに日本にも本格的な割り勘アプリがでてきたということで、個人的に大注目である。paymo自体は、資金決済法でいうところの資金移動業の登録をしていないスキームだそうで、それもびっくりなわけだが、これからますます日本でも、事業会社によるこんなサービスがどんどん出てくるのだろう。
(paymoに関しては、金融庁の力が大きいこの国で、資金移動業の登録しなくて大丈夫ナノカナーとも思うけど、ベンチャーたるものそういう規制の細かい抜け穴を見つけてサービスを拡大していくということなんだろうな。)

そして、この流れに乗り遅れつつあるのは日本の既存の銀行やノンバンクである。
最近よく思うのだけど、国内でFinTechどうのこうので騒がれている会社って、べつにとんでもないテクノロジーを開発しているわけではない。資本力のある銀行なりノンバンクでも実現できたようなビジネスである。割り勘アプリだってそうだろう。しかし彼らには、なぜか、それが、できない。せいぜいVCつくって出資してるだけ。

私がかつて在籍していた金融機関には、今、FinTechを進めるためのデジタルイノベーション室とかいう組織が立ち上がっているらしい。デジタルイノベーションというネーミング自体がイノベーティブじゃないしオワコン感を漂わせている。既存銀行やノンバンクは、技術的な意味ではなく意思決定のスピードとかデザイン能力の都合で、このまま乗り遅れていくのだろう。
つい一昨日も、新たにpaymoライクな送金アプリ「Kyash」がiOS版としてで登場したぞ。ここの社長の鷹取さんは三井住友銀行出身らしい。こうやって人材が外に出て行ってしまうのである。