「仙台市ではない宮城県」出身の人に「出身どこ?」と聞いてみる。
そうすると大抵「仙台」と答える。おいおいビミョウに嘘ついてるな! そこは宮城県って言おうよ。
出身地はどこかと聞かれたら、名古屋とは絶対答えたくない豊橋出身者とは大違いである。

さて、岩手県へ行ってきた。

「岩手に行くんですよー」と周囲に言いふらしていたら、たまにいく美容院のアシスタントの子が「わたしの実家、盛岡なんです!」と言ってきた。
しかし! よく聞いてみたらその子は盛岡出身ではなかった。盛岡から少し離れた紫波町に実家があるという。おいおい盛ったな。東北はこういう傾向があるのか……。

しかしながら、私の目的地はその「紫波町」にあった。

目的地は紫波中央駅からほど近い「オガール」である!
でーん。
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オガールは、街づくり業界では知られた存在の、広場やら図書館やらマルシェやら体育館がある施設である。
ポイントはいろいろあるが、最重要なのは、町の土地に民間の発想で施設が作られ、運営されていることである。民間の発想でというと、昔からPFI方式というやつは各地でおこなわれていた。だが紫波町の場合は一歩進んで、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)という方式をとっている。そして特筆すべきは、民間の発想なので、回収できるレベルしか設備投資しないという方針だ。

例えばオガールインという宿泊施設がある。
だが、超簡素なのだ。
私も泊まったのだけれど、壁が薄い!
湯船もない!
プレハブに毛が生えたみたいなつくりである。

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洗面所はこんな感じ。


この宿泊施設の隣にバレーボール専用体育館があって、全国のバレーボール関係者が集まるゆえ、合宿などを想定して簡易的な宿泊施設にしたようだ。どうせ合宿だしね。

宿泊していたら、廊下ですれ違う学生っぽい子に「おつかれさまです!」といわれた。ついつい私も「おつかれさまです!」と返事してしまったが、そういう関係者ばっかりが使っているということの証左だろう。

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他にも、地元の産直品を売っているマルシェがある。ここもたいへん簡素なつくりで、金をかけていない感がよくわかった。一方で品物はしっかりとしていて、商品がよければ内装にお金をかけなくても客は来るということを証明していた。

ところでこの紫波に来る直前に、私は平泉に住む友人とランチしていた。その平泉の友人いわく、その友人の妹が盛岡に住んでいて、よく紫波のマルシェまで買い物に来ているそうだ。地図上、盛岡も充分に商圏なわけだけど、実際に買い物に来ている人がいるということを聞くと、商品力が確かなんだなぁと実感する。

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さてこのオガール。
東北といえば大失敗の青森アウガがあるが、税金が投入されまくったアウガと違って、オガールは資金も民間のものが活用されている。優秀なFAがつき、どうやら当初メガバンクには無視されたらしいが、地銀が一肌脱いでくれたようだ。民間銀行が融資をするということは、ちゃんと返してくれるかどうかという民間視点での審査があるわけで、それに見あった身の丈にあった開発がおこなわれたということでもある。

もちろん未来永劫、オガールが成功し続ける保証もないし、これまでも小さな失敗は繰り返してきているだろう。しかしその都度適切な判断ができるのが、経済合理性にあった開発のいいところである。
だいたい紫波中央駅は無人駅である。そんな駅前の土地をどう活かすかと考えたとき、「複合」商業施設をつくるのではなく、ターゲットをバレーボール部とかニッチなところに絞込み、しっかりした事業計画をつくったところがすばらしい。


紫波町に実家があるという美容院のアシスタントの子は、聞けば実家の位置はオガールのすぐ近くという。「私のうちは右まがって左まがってあのあたりです!」と言ってた。どこだ!
そして私があの有名なオガールに行くと言ったら、「え? オガールって有名なんですか?(笑)」と言っていた。紫波にゆかりのある人ですら、自分の地元の何かが有名だと気づかない、そんなところに身の丈にあっている感を感じた。



町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト