映画「クレイジー・リッチ!」(原題:Crazy Rich Asians)を見た。

話の筋はよくある王道シンデレラストーリーなのであるが、着目すべきはなんといってもこれがアジア人によるアジアを舞台にした映画ということであろう。
もちろんこれまでもアジアを舞台にした映画はあったが、アジア人が正統派の金持ちとして描かれ、蔑まされた対象としてのアジア人ではなく、一般描写の対象としてのアジア人が登場するところがミソだ。
冒頭シーンからして、アジア人を見下す白人の意識をあからさまに描いており、この映画が、これまでのヒット映画で描かれてきたアジア人像をひっくり返すことを意識していたことは間違いない。
ところで世界の映画を見ることは、世界の風景を見ることになる。
その国の映画を見ることで、それが主目的ではないにも関わらず、その国の風景や文化を知ることができる。
クレイジー・リッチ!ではシンガポールの景色が描かれ、シンガポールの文化が描かれる。

マリーナベイサンズ、セントーサ島、マーライオン、植物園など、おなじみのシンガポールの景色が映し出され、あるいはホーカーズでのサテやラクサなど地元料理も映り込む。普段はアメリカの映像ばっかり映し出される映画館のスクリーンに、シンガポールの景色が映るだけでなんだか新鮮だ。そういえば、見た目は同じだったとしても、シンガポールの華僑と、中華系アメリカ人とを区別するというシーンが出てくるのも皮肉が効いている。

あらゆるシーンで、アジア発の映画であることを意識させる作りだったが、その中でもぐっときたのは、餃子のくだりとマージャンのくだりである。おそらく餃子もマージャンも、白人からしたら「なんだなんだ?」というシロモノである。それを物語のキーとなるところにぶっこんできた。ポーカーじゃなくてマージャンですよ、というのがじつにいい。
この映画は、中華系の人の話、と括ることもできるが、餃子もマージャンも知っている日本人としても、素直に入りこむことができるし、アジア人として一緒に蔑まされてきた歴史を考えるとスカッとするわけである。

登場人物の一人として、ケン・チョンという役者が出てくる。映画「ハングオーバー!」で、中国だか香港だかのお金持ち役「チャウ」を演じていたあの人だ。
ハングオーバー!では、金持ちだけど嘲笑の対象となっていた彼が、クレイジー・リッチ!でも登場の冒頭、英語を喋れないおバカキャラを劇中劇的に演じる。しかしじつはそれは嘘で、本当は留学もしていて英語もしゃべれますよ、ということをすぐネタバラシする。
なんだか、これまでアジア人が、白人文化の映画界の中で、敢えてバカな役をやってきたことを痛烈に皮肉っているようだった。