みんな大好き演劇集団キャラメルボックスが活動休止を発表した。
そして、キャラメルボックスの公演の企画をしていた株式会社ネビュラプロジェクトが破産開始決定を受けた。

キャラメルボックスといえば演劇界では知らない人はいない劇団である。

そんなキャラメルボックスで私が特に覚えている公演といえば、2011年、東日本大震災の後に行われた緊急公演である。
簡単に言うと、東日本大震災の影響でキャラメルボックスは資金繰りが悪化し、キャッシュを確保するために急遽公演を行ったわけである。
公式には資金繰り云々とは書かれてないが、経営がヤバそうだというのは当時の観客たちの共通認識だったと思われる。


via 演劇集団キャラメルボックス「銀河旋律」の観てきた!クチコミとコメント
「夏の扉」公演中に起きた東北大震災の影響で、
その後の観劇動員数・チケット売り上げが激減、
劇団設立以来の存続の危機に直面しているというキャラメルボックス。

巻き返すには、とにかく芝居を打つしかない!というわけで
急遽公演が決まった演目の一つです。
このときのキャラメルボックス緊急公演vol.2「銀河旋律」では、ふだんお芝居をやるようなホールではない山野ホールという劇場を使って上演をおこなっていた。
キャラメルボックスの資金繰りが苦しいらしいという噂を耳にした私も見に行ったのだが、既存脚本、安価なホールで経費を抑えつつ売上を上げ、当面を乗り切ろうという気概が感じられた公演だった。もっと言うと、お芝居の内容よりも、私個人としては経営の成否がドキドキ気になる公演だったと記憶している。(いや、もちろん銀河旋律は素敵な作品なのだけれども。)

そして今回の運営会社の破産開始決定と劇団の活動休止である。


劇団の中の人やファンの間では、運営会社が破産しようが劇団とは別の存在だから、いつかキャラメルボックスが復活して再び上演をおこなうことを願い、期待している様子がうかがえる。



via 成井豊の公式ブログ
本日、5月31日(金)午後9時に、演劇集団キャラメルボックスのホームページで、キャラメルボックスの活動休止を発表しました。
キャラメルボックスの公演を楽しみにしてくださっていた皆様に深くお詫び申し上げます。
申し訳ありません。
突然の話で、驚かれた方も多いかと思いますが、数カ月にわたって、劇団員全員で何度も何度も話し合いをした末に出した結論です。
が、くれぐれも誤解していただきたくないのは、これはあくまでも「休止」であり、「解散」ではないということです。
活動が再開できるその日まで、劇団員一同、精進するつもりです。
私ももちろん頑張ります!

たしかに理屈としては、活動再開はあり得るかもしれない、と思う。

だが、株式会社ネビュラプロジェクトは負債を5億円抱えている(いた)のである。
債権者の立場としては、もしキャラメルボックスが任意団体として復活し、そして売り上げをあげる行為を行ったとしたら「はぁ?ふざけんな」と思わないだろうか。

いわば、株式会社ネビュラプロジェクトが抱える見えない「資産」だった役者や脚本家の能力の集合体(劇団)が、まるっとよその団体に移って売り上げをあげる活動してたら、むかつくわけである。そんな資産があったなら債務弁済しろよ、と思われるわけだ。
例えばどっかの演劇制作プロダクション会社がキャラメルボックスを受け入れたとしたら、ネビュラプロジェクトの債権者からその会社に対して、資産譲渡だから対価をよこせ、と言われるみたいな感じ。

しかし一方で、そもそも従業員(劇団員)は資産計上されるものではない。さらに言えば、キャラメルボックスは集団として存在することではじめて価値を生むチームになるわけで、言い方は悪いが個々人が独立して存在していても大きな価値はない。
百歩譲って、成井豊氏が過去に執筆した脚本は資産と言えるだろうが、著作権・著作隣接権が成井豊氏から株式会社ネビュラプロジェクトに譲渡されていない限り、あくまで成井氏個人に帰属するものだろう。
よって、既存の会社に事業承継されるのではなく、演劇集団キャラメルボックスのメンバーが、勝手に任意団体を組織し興業を打ったとすると、株式会社ネビュラプロジェクトの債権者たちはなかなか文句も言いづらいわけである。


だが、もっと根本的なところで、株式会社ネビュラプロジェクトの破産開始はキャラメルボックスの公演継続に赤信号を灯す。

今後新生キャラメルボックスが公演を打とうというとき、団体としては別組織になったとしても、中身的には債務不履行の経験がある人たちの集団であるわけで、その人たちと、お取引をしようという人たちが現れるかどうか、という問題だ。

例えば劇場を抑えるときのことを考えよう。
それなりの劇場であれば公演数年前から予約が必要だ。しかし新生キャラメルボックスは劇場代を払ってくれるかどうかがあやしい集団なわけで、劇場側は貸し出しを渋るだろう。もっとも、前払いだったらOKをもらえるかもしれないが、公演数年前の段階ではチケットも売り出していないし、キャッシュがない。
もちろん、債務不履行している団体ということで、銀行借り入れも難しいだろう。

そうすると、新規に大きな資本が注入されるなり、公演数年前の段階から、大勢の個人によるクラウドファンディングで調達するなどが想定されるところである。しかし、敏腕プロデューサーのいない新生キャラメルボックスに、それが可能かどうか分からない。

ちなみに、株式会社ネビュラプロジェクト代表取締役の加藤さんは、もし銀行借入の連帯保証に入っていたとすれば、新しく調達業務をするどころの話じゃない。
(個人的には、加藤さんは今後の新生キャラメルボックスから距離を置くことで、ある意味キャラメルボックスの今後の進展を願っているのではないかと推測する。ひとりでリスク抱えて相当かわいそうだなと思う。)

現実的な解は、債権回収できないリスクを背負ってでも助けてやるよという小劇場オーナーやスタッフたちがあらわれ、その人たちとともにスモールにリスタートしていくというところだろうか。

ちなみに、会計士の山田真哉さんも株式会社ネビュラプロジェクトから債権回収できてないらしい。





via 「演劇集団キャラメルボックス」、観客動員数の落ち込みで破産を決意
こうした状況から2018年末、成井豊氏が加藤昌史社長にキャラメルボックス休団の意向を伝えたという。

キャラメルボックスを休団するということは、株式会社ネビュラプロジェクトが立ち行かなくなることを意味しており、つまり2018年末には、破産手続きは想定されていたのだろう。

そして、劇団員の給与も未払いになっていたそうだ。
私もキャラメルボックスの中にいた人(一部)を知らないわけではないので、あの人お金もらってなかったのか……、とちょっぴり感傷的になってしまう。

via キャラメルボックス、給与未払いでも舞台に立ち続けていた
債権者数は228名、負債総額は5億2,071万円だったことが判明している。劇団関係の債権者数は65名で、債権額は合計1億9,779万円に達する。このうち、劇団員は45名で債権総額は6,318万円。1人当たり平均額は140万円に及ぶ。最高は、出演料等で790万円だった。
また、スタッフ20名の債権総額は1億3,461万円で、1人当たり平均は673万円。20名分の内訳は、未払給与9,810万円、退職金3,587万円、解雇予告手当63万円だった。
未払給与は、2015年の退職者分から生じ、退職金は2014年から未払いが散見されていた。
これだけの負債がありながら、もし活動休止決定以降に劇団員に給与を支払ってしまっていたら、他の債務もあるなか偏頗弁済になってしまうし、妥当なところだろう。
そんな給与未払いの中でも、半年間延命措置をし、公演をやり遂げたというのが最後の意地だったのだろうと思う。