「高校演劇のページ」というウェブサイトがある。
その名の通り、高校演劇の情報を集めた高校演劇のポータルサイトだ。
そのページが開設から9年を経て、この春閉鎖することになったそうだ。
閉鎖するなんてもったいないと思いながら、一方でときの流れの仕方なさを感じつつ、このウェブサイトには私も随分お世話になったものだから、「高校演劇のページ」に対する思い出話でも少し書き記してみたい。
私が高校演劇のページに出会ったのは、今から8年前、自分が高校一年生のときだった。当時高校の演劇部に入部していた私は、高校演劇の情報を集めようと思ってウェブサーフィンを繰り返していた。今でこそ高校演劇情報を扱うウェブサイトはたくさんあるし、各演劇部ごとに自分たちのサイトやブログを持つことも珍しくはなくなってきた。しかし当時は高校演劇情報を扱うサイトもそれほど多くはなかった。その中で高校演劇のページは、各種情報を揃えた高校演劇のまさしくポータルとして存在していたのだ。当時はまだ、「ポータルサイト」なんていう言葉は世の中には浸透していない頃で、Yahoo!JapanがMy Yahoo!を始めましたとかそんな時代だったので、とくに高校演劇のページも、「ポータルサイト」と名乗っていたわけではない。だが、それでも利用者は皆、こここそが高校演劇ウェブサイト界の最も人と情報が集まる場所だと思っていただろう。
そして私もこのサイトを見つけてから、よく入り浸るようになっていた。
まだ我が家はナローバンドの時代だったから、23時になるまでは待機していて、23時になった瞬間にダイアルアップでアクセスしたりして。(23時以降は電話代が定額になるサービスがあり、当時のダイアルアップ接続のネットユーザーは、みんなこれを使っていたのだ。)
で、みんな23時以降に接続するものだから、誰かが決めたわけではないのに、高校演劇のページのチャットルームには23時を過ぎると人が集まりだす、という現象が起こっていたものだ。みんな同じ時間に繋ぐから、チャットも一つの時間に一斉に人が集まって、相当な盛り上がりを見せていたと記憶している。
当時、チャットに来ていた人たちの中には、全国大会出場校の人なんてざらにいて、全国大会最優秀賞をとった学校の作者とか、あるいは優秀校の主演とか、なんか結構すごかった。今、高校演劇を卒業して、自分の劇団を持ち、うんたら戯曲賞とか受賞している人もいる。活躍する名前を聞くからそれですごいというわけではないけれど、そういう人たちが集っていたというのは、この高校演劇のページがそれだけ影響力のあるところだったんだな、と思わせるに充分である。
で、私もよくチャットに入り浸っていて、チャットや掲示板で出会った人のなかには今でもつき合いのある人がいる。そう考えると、いわゆる出会い系の走りかもしれない。いや、高校演劇のページの場合、集う人はみんな高校演劇関係者だから、高校演劇の大会があればみんな顔を合わせているから、純粋な見ず知らずの人との出会い系ではないけどね。
私も、高校演劇のページで各地の大会情報を入手してはそこの地域に出向き、その大会で芝居を見つつ、偶然か必然か、高校演劇のページのユーザーの人と顔を合わせたりしていたよ。いわゆる「オフ会」というのは一度も出たことがないのに、ここのユーザーで顔を知っている人はたくさんいるのだ。
私の所属していた演劇部は、顧問が機能していなかったので、周りの演劇部情報が入ってこなかったのだな。そんなとき、高校演劇のページで情報を得て、各地の大会に出向くのは、とても楽しかった。高校三年間の間に出かけた大会の場所は、愛知県、三重県、岐阜県、福井県、富山県、静岡県と、弱小演劇部員だったくせに結構回ったものだ。
高校二年生のときに富山県で出会ったある人とは、今でもよくつき合いがあり、最近でも東京で一緒に仕事をしたりしている。その人は大道具で、私は照明で、という感じで。
愛知県で出会ったある人とも、やっぱり今でもつき合いがあり、こちらも私に照明の仕事を振ってくれたりしている。他にも、最近は会ってないけどSNSでリンクしている人とか結構いるぞ。
そうそう。
私はいま、ネコでもわかる照明の部屋というウェブサイトを持っているが、このサイトもそもそも高校演劇のページでの出会いがなければ始まらなかっただろうと思う。
たしか高校一年生が終わる頃、高校演劇のページのチャットルームで、とある人と話し込むことになった。その人が、じつは近くの高校の先輩だということが発覚する。で、その人が裏方向けのサイトを作ろうと思っていてうんたら、という話になり、私も協力することになった。そうして、舞台照明の解説記事を書いてくれという話になり、私が彼のサイトに寄稿したのだった。で、彼のサイトが閉鎖されることになったとき、もったいないから照明の記事部分だけ引き継いで自分で立ち上げたのがネコでもわかる照明の部屋なのである。(ちなみに、彼の妹がその後 私のいた高校に入学することになる。で、私とその妹が、生徒会で一緒に仕事をするという珍事も発生した。)
あぁ、あと今突然思い出したけどさ。
やはり高校演劇のページのチャットルームで会った人が、やっぱりうちの近くの高校の先輩だったということがあった。彼女とはその後、愛知県大会の場でリアルに会うことが出来たが、彼女が卒業後は、べつに連絡先も交換しておらず音信不通になってしまった。だが、つい先日、私が照明家として関わっていた地元の某劇団の掲示板に、彼女が書き込みをしているのを見つけ 久々の(ネット上での)再会を果たした。
じつに6年か7年ぶりぐらいだったが、彼女は私の名前(本名もハンドルネームも)を覚えていてくれたようで、私もしっかり彼女の名前を覚えていた。彼女は今、結婚して一児の母らしい。なんか、感慨深い。
というわけで、高校演劇のページを介しての出会いは本当にたくさんあった。
ここの出会いがきっかけで、お互いが出場している大会を見に行ったりとか。ここで連絡を取り合って、演劇のビデオを融通してもらったりとか。あと、高校演劇の大会のチケットを譲ったりあるいは譲られたり。
あぁ、全部書こうと思っても、思い出がありすぎて書ききれない。
人との出会いもたくさんあったし、情報との出会いもたくさんあった。このウェブサイトがなければ、きっと私がここまで演劇にのめり込むことはなかっただろう。今は「高校演劇」というジャンルだけに首を突っ込んでいるわけではなく、演劇全般に携わっているつもりだが、まず入り口として高校演劇がなかったら、今のように演劇全般にまで辿り着くこともなかっただろう。それだけ高校演劇のページには、お世話になった。
高校演劇のページの管理人さんにも、随分お世話になった。
初めて会ったのは、たしか地元の駅だったと思う。お互いハンドルネームしか知らない関係だったけど、たまたま両方の顔を知っている共通の知り合いがいて、正月にその人が管理人さんと初詣に行こうと駅で待ち合わせをしていたのだ。そこになぜか私が通りかかったわけである。んで、オフ会でもないし高校演劇の大会でもないのに、なぜかそこでたまたま会って顔見知りになった。
その後、管理人さんには私の高校の舞台の撮影をお願いしたりして、本当に何かとお世話になったものである。
高校演劇のページには、すごくお世話になった。
感謝しても感謝しきれないぐらいだ。
この9年間、高校演劇関係者でネットに強い人だったら、きっと誰もがお世話になったことだろう。
ウェブサイトの終焉は哀しいけれど、今までの感謝を込めて、ありがとうの気持ちを忘れずにいたい。高校演劇のページよ、ありがとう。