本田由紀さんのブログのエントリー「就職情報の大学間格差生成装置としての就職サイト」がちまたで話題だ。ギークの皆さんには乗り遅れながらも、たまには話題の話についても言及してみよう。

さて、このエントリーがなぜ話題(炎上)になっているかと言うと、就職サイトについて以下のような書き方がされているからだ。

ある就職サイトでは、登録した学生が在学する大学名によって、送られてくるメールや資料の数に以下の表に示すような大きな違いがある。
(略)このように、就職サイトでは、登録した学生の大学名によって自動的に情報提供のスクリーニングが発生しているのだ。もし学生が就職サイトだけに依存せず、様々なルートを通じて企業にアプローチしているなら、こうした情報格差は緩和されるだろう。しかし、もし学生が就職サイトから来る情報を重視し、そこから送られてくるメールや資料の範囲で就活を行おうとするならば、それは大学間の情報格差生成装置たる就職サイトの陥穽に自らはまりこんでしまうことに他ならない。こうした就職サイトの弊害はもっと世の中で喧伝されるべきだ。

これに対して、「んなアホな」「呆れてものも言えない」という意見がいっぱいトラバされているよ。新卒採用関係をはじめ、人材業界にお勤めの皆さんは、ぜひじっくりそれらを読んでいただきたい。たいへん興味深い。

既に他の人々も書いているが、実際は就職サイトが「自動的に」学歴差別を行っているのでは決してない。企業側が、学歴でフィルタリングをかけてサイトをうまく使っているというだけだ。自社への応募者に選考会の案内メールを送信するときに、偏差値の高い大学の学生から先にメールを送って、時間をあけて下のレベルの大学の学生にメールを送信する、みたいにね。(で、全員にメールが行き届く頃にはとっくに選考会は「満席」表示になっている。)こういうのは、就職サイトがそういうことが出来る機能を用意しているという前提こそあるかもしれないが、結局「企業側が自ら望んで」それを使っているというだけの話だ。
企業も、学歴の高い方が採用にへんなコストかからないからやりやすいだろう絶対。
例えばこれ。新卒採用コンサルティングのレイス(旧 日本ビジネスタンク)のサイトに載っている採用コンサル成功事例。企業にとっても、優秀か否かの指標として学歴はもっとも分かりやすいものなのである。

と、まぁ就職サイトが弊害だとは私は思ってないので、かの本田さんのへんな指摘については別にどうでもいいのだが、ついでに考えたことでふと思ったのは、そもそも就職サイトを使うということだけで、学生の就職活動が完結気味になっている点についてだ。

この間、大学時代の後輩(就職活動生)から電話がかかってきて、「希望の会社のエントリーがもう締め切られてるんです。どうしたらいいでしょうか?」とか聞いてきた。
なんか、エントリーしようと思っていた会社があったのだけれど、リクナビみたらエントリーの締め切りを過ぎてしまっていた、との話だ。
んなもん、直接その会社の人事に電話でもしてみろよ、と思ったけど、学生側としては、採用の入り口はもはやリクナビ一本という盲信があり、そこでダメと言われたら他の手段を考えられないのである。実際はそんなことないのにね。
(この話を、うちの会社の人事部採用担当と雑談の中で話してたら、その採用担当は「うちの会社だったら直接電話してきてくれたら何とか考えるけどなぁ」と言っていた。)

実際、私の周りには、新卒採用してない会社に新卒で入社した奴とかざらにいるし、なんてことはない、結局企業も人間がいる場所なのだから、よっぽど入りたいなら正規のルートじゃなくても面接ぐらいにはこぎ着けるはずである。(そこで内定が出るかどうかは別だが。)

で、これは中途採用にも言えることだ。
最近 電車内広告がすごいけど、今、転職市場も超活性化しているようで、人材紹介会社や求人広告会社の広告が、いっぱい出ている。インテリジェンスとかエン・ジャパンとか。皆さん働くを楽しんでますか、でも転職は慎重にね。みたいな。

これらの広告を見て、転職活動中の人は人材紹介会社に登録したり、リクナビNEXTやらエンを使うのだろうけど、これ使ったところであんまりいいことないよなーと私は思う。
人材紹介会社を使ったところで、所詮は転職者はみんな「持ち駒」扱いされるだけで、「求職者と企業のマッチング」っていうけど、それは駒と駒のマッチングに過ぎない。小さい紹介会社で、キャリアアドバイザーもリクルーティングアドバイザーも、どっちも一人で兼務しているようなところだったら話は別だけど、リクルートエージェント(旧 リクルートエイブリック)もインテリジェンスもJACジャパンも、みんな 登録者は持ち駒扱いだよ(きっと)。
なんかよくわからんのだが、この一年の間に、人材紹介会社で働く複数の人から、この「持ち駒」の事実について愚痴られた。私は人材業界の人間じゃないから、気軽に彼らは私に愚痴ってきたのだろうけど、その話を聞いて、私は人材紹介会社の利用方法について慎重に意識せざるを得なくなったのである。

とか思っていたところに、以下のような記事を見つけた。 市場は最後の手段:転職は人づてで

だから転職を考えている君、リクナビNEXTには登録してはいけない。その瞬間に君は情報になってしまう。ヘッドハンターはどうか。エグゼクティブなら良い。ただペンペン草程度の輩では、結局情報にされてしまう。ヘッドハンターと会ったところで、相手の企業には「エクセルが上手い人」リストの1人として提出されるだけである。
じゃぁ、どうしろと言うのか。1対1で事が運ぶように頑張るしかない。自分が前に出て、前の人がOKと言ったら決まり、という状況を作るしかない。

おおー。
私が常々思っていたことをずばり書いている。
究極的には人材紹介会社を使わざるを得ない状況もあるだろうが、一番良いのは、そんなところを使わずに自分のツテで新しい場所を見つけるという方法なのだ。自分の知っている人からヘッドハンティングされるのが、最も良い。そのために、ヘッドハンティングされるに相応のレベルに自分を高めておくことが必要だが、そうしてはじめて良い転職が出来る。

ちなみに、私の今の職場に最近中途入社してきた人が、どの媒体経由なのかという内訳は、「インテリジェンス:4人、リクルートエイブリック(リクルートエージェント):2人、JACジャパン:1人、リクナビNEXT:1人、うちの社員からの紹介:2人」である。(私の趣味で、中途採用者が入ってくるたびに本人をとっ捕まえて聞いてみた。)
で、人材紹介会社経由の人も求人広告経由の人も、みんなそれぞれ仕事が出来たり出来なかったりいろいろあるけれど、とりあえす社員からの紹介で入ってきた2人は、文句なしに仕事が出来ている。あまりに少ないサンプリング数だから、結論付けは出来ないけれど、人材採用で一番確実で、お互い一番ハッピーなのは、やはり「旧知の知人からの紹介」なのである。