書評、と呼べるほどのものではないが、最近読んだ本で面白かったものを書いてみよう。

■文化に投資する時代

エンターテイメントファンド、映画投資の本。
二名の著者による共著で、もともと広告マンでエンターテイメントファンド業界に参入した亀田氏と、もともと銀行マンで映画投資へ向かった寺嶋氏がそれぞれ半分ずつ執筆している。
金融スキーム的には今でこそ珍しくはないエンターテイメントのファンド化だが、特に亀田氏に関しては世の中的にそんなものが認識されていなかった頃からの紆余曲折がストーリー立てて書かれており臨場感あふれる。
もう一人の寺嶋氏のほうは、どちらかというと分析的な書き方が印象的。たぶんこの人は最近のネットにも詳しいだろうなぁというマーケティング分析の話などが出てくる。いや、ネットについては特に触れた項はないが、書いている内容がどうもネットの人っぽい。でも金融出身というのがいいね。
なお、ここに出てくる金融スキームについては、特に驚くものはない。もちろんそれは今それ自体が知れ渡ってしまっているからということもあるけど。エンターテイメント投資/ファンドについては、「フラガールを支えた映画ファンドのスゴい仕組み」もあわせて読みたい。
そして、寺嶋氏に関しては、現在アスミック・エース エンターテイメントにいらっしゃるとのこと。アスミック・エースといえば、原正人氏! 原氏の「映画プロデューサーが語るヒットの哲学」もたしか資金調達の話がかなり出てきていたと思うので、こちらも合わせて読みたい。一つの案件を複数の視点で見られるというのはなかなかない機会である。


■現代アート、超入門!

タイトル通りの本。現代アートの入門書。
現代アートを理解しようと何度も美術館へ足を運ぶものの、たいていよくわからないまま終わる私としては、やはり惹かれるタイトルである。
著者の藤田氏も、アート好きではない人たちから「現代アートってよくわからない」と言われるという問題意識からこの本を執筆しており、視点が同じなのはありがたい。アート好きのためのアート入門書ではないのだ。特に、ページをめくれば紹介されている代表的な現代アート作品について、「あなたはどう思いますか?」と問いかけをいちいちしてくれるところがポイント。あえて二択の選択肢を読者に与えてくれることで、考えながら現代アートに触れるきっかけになること間違いなし。
現代アート関係の入門本としては、賛否両論あるが「現代アート入門の入門」以来の一般市民へ理解してもらうことに切り込んだ新書な気がする。こちらも合わせて読みたい。