当たり前な話を書く。

あまり普段見ないジャンルの舞台芸術に触れようと思い、最近は普段自分が見ないジャンルの舞台を見ることにしている。
ノルマのようにチケットを入手し、修行のように劇場をはしごする日々。googleカレンダーに劇場名だけを入れておいたら、その日に自分が何の作品を見るのか覚えていないということも多々ある日々である。作品のジャンルは多種多様。

ここ3ヶ月ぐらいで見たのはこんな感じ。

ストレートプレイ
怒りをこめてふり返れ新国立劇場小劇場
魔都夜曲シアターコクーン
文学座「中橋公館」紀伊國屋ホール
チックシアタートラム
ワーニャ伯父さん新国立劇場小劇場
少年王者舘「シアンガーデン」ザ・スズナリ
ミッドナイト・イン・バリ〜史上最悪の結婚前夜〜シアタークリエ

ミュージカル
ファインディング・ネバーランド東急シアターオーブ
パジャマゲーム日本青年館ホール
シカゴ東急シアターオーブ
ウエスト・サイド・ストーリー東急シアターオーブ
坊ちゃん劇場「52days」新宿文化センター大ホール

歌舞伎
スーパー歌舞伎II「ワンピース」新橋演舞場

その他の伝統芸能
鼓童「若い夏」浅草公会堂

オペラ
神々の黄昏新国立劇場オペラハウス

ダンス
上海歌劇団「舞劇『朱鷺』−TOKI−」オーチャードホール
LENINGRAD HOTELスパイラルホール
信長 ―NOBUNAGA― 東京国際フォーラムホールC

ノンバーバルパフォーマンス
アラタオルタナティブシアター
GEARギア専用劇場
マルタン・ズィメルマン「Hallo」東京芸術劇場プレイハウス

人形劇
たいらじょう「はなれ瞽女おりん」新国立劇場 小劇場


これらを見ている間に海外へ出かけたりもしており、舞台ばかり見ているわけでもないのでなかなか密度の濃い日々である。ご招待いただく作品もあるのだけれどお金もなくなる。

で、超あたりまえのことを書くのだけど、いろんなジャンルを横断して舞台芸術を見ていたら、それぞれの劇場での客層の違いを目の当たりにした。

ここで身も蓋も無いマトリックスを用意する。
観客が、「作品に価値を見出して」見に行くのか、それとも「役者に価値を見出して」見に行くのかでマトリックスにしてみた。

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もうこの時点で演劇ファンのこうるさい人たちからブーイングが来るのが目に見えているけれど、戯言だと思って聞いてくれ。
まず、役者に価値を見出すが作品には価値を見出さない系。

これは、つまりきゃーきゃーいえる役者が出てればチケットを買う客層で、作品がどういう作家だろうがどういう演出家だろうが気にしないセグメント。チケットが一番売れるやつ。
例として、シアタークリエ系ということでくくってみた。

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開館以来、シアタークリエになんてほとんど足を運んだことのない私だったが、先日ゲイノウジンも出ている「ミッドナイト・イン・バリ」を見て楽しくすごした。(なお、作品に価値が無い、と言っているわけではなく、観客がチケットを買うときに作品を気にしていない、ということを言いたいので誤解なきよう。)
ミッドナイト・イン・バリは、ウディ・アレンの映画からタイトルを取ったことは明らかだが、役者目当てでチケットを購入した層にはそんなことはどーでもいいだろう。(という偏見。)


つづきまして、今度はシアタークリエ系の真逆で、作品に価値を見出すが役者はどうでもいいというセグメントだ。名づけて新国立劇場系。

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新国立劇場でも、べつに有名な役者が出てないわけではないけれど、新国立劇場主催公演で、役者ありきで人を呼ぶ作品というのはあまり聞かない。
主催公演ではないが、例えば先日見た作品、たいらじょうの人形劇なんて、そもそも人形劇だからね。有名な役者どころの話ではない。ただの人形。なのに見に来る人が大勢いるのである。なんだかこういうのを見に来る客層って、インテリぶってるように感じて引きますね。目の前にいた客同士がなぜか名刺交換してて、はからずもそれが目に入ってしまったのだが、片方が東京大学の名刺で、片方が某大手出版社の名刺だった。うわーインテリ。


つづきまして、役者にも価値を見出すし作品にも価値を見出すオールラウンダーなセグメント。ここは何と書くべきか迷ったが、私が最近よく足を運んだシアターオーブ系としておいた。

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米倉涼子主演、シカゴを代表格としよう。他にも歌舞伎はこのへんですかね。
この層は、作品だけが目立ってもダメだし役者だけが目立ってもダメなのである。トータル的によくなければならず、しかも劇場に行くこと自体をエンターテイメントとして楽しむ層である。シアターオーブのロビーでひたすら写真とってインスタ載せてる層。いや、シアタークリエ系の人たちも写真は撮るのだが、あの層はまず役者ありきで写真を撮る。対してシアターオーブ系の人たちは、劇場体験そのものの写真をインスタにアップするのだ。


さて最後に、作品にも価値を見出さず、役者にも価値を見出さない層である。
いったいそんな人たちがいるのかというと、いるのだな。名づけて下北沢系である。
もっと噛み砕いていうと、客席の半分以上が役者のお友達でチケットノルマを消化するためにわざわざ見に来てくれている系。

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この夏は、下北沢はザ・スズナリに、少年王者舘を見に行った。少年王者舘は小劇場でも名の知れた劇団なので、そこまでノルマ客がいるとは思わないが、それでもなんだか「演劇やってます」系の若者なんかが押し寄せているのである。客席で近くに座っている人の会話に聞き耳を立ててみると、自らが舞台に立っている人の役者視点での会話の多いこと。
というか、私は数年ぶりにスズナリに来たというのに、なぜか劇場内で知り合いに会ってしまった。世界の狭さというか、同じ穴の狢というか……。


というわけで、そんなの当たり前だという話なのだけれど、演劇観客マトリクスでした。
同じ演劇ファンといっても全部一緒にしてはいけませんよ。

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