じつは15年ぐらい前に、港区に建設予定の(仮称)文化芸術ホールの検討委員だったことがある。
紆余曲折を経た結果、建設予定はのびのびになっているのだけれど、その(仮称)文化芸術ホールの「気運醸成事業支援業務委託」なるものを港区が実施することになり、その事業者に芸術公社が選定された。

(仮称)文化芸術ホール整備に向けた気運醸成事業支援業務委託に係るプロポーザルの選考結果について
選考事業候補者名
特定非営利活動法人 芸術公社


芸術公社は相馬千秋さん率いるチームで、シアターコモンズを実施している団体でもある。

さて、この気運醸成事業支援業務委託に対する芸術公社の企画書を見ていたら、気になる言葉を発見した。
その言葉とは「ヤングケアラー」である。

(1)シンポジウム及びワークショップの企画・運営
【テーマ】共生社会と創造性をめぐって(仮)
コロナ禍は、すべての人が潜在的に病人、弱者になりえるということを改めて人類に突きつけると同時に、社会の至るところでケアを担ってきた人たち、医療従事者やケア労働者、ヤングケアラーといった人々の存在を顕在化しました。(中略)コロナ以降に目指すべき共生社会の形と、そこで可能なアートの役割について、事例を交えて議論します。


ここで、さらりとヤングケアラーという言葉が入っていることに驚きつつ、さすがだなと感嘆した。

港区内を会場とし、芸術公社が主催していた2021年のシアターコモンズ’21では、AR映画「サスペンデッド」という作品が上演された。内容はまさしくヤングケアラーを扱うものだった。作品の上映にあわせて、「病の時代を生きる“力”『マザリング』とアート」というワークショップも開催され、私はわけもわからず参加したわけだが、恥ずかしながらそこではじめてこの社会の「ヤングケアラー」の存在を認識した覚えがある。
しかしそのとき私が考えたことは、「ヤングケアラーって近所にいるのかもしれないけど、会ったことないなぁ」である。
港区のような都市部では、各々の社会属性の人たちの生活が棲み分けされていて、まじわることが少ない。ざっくり言うと、ホワイトカラーのオフィス労働者は、近所に住んでいる子どもの顔がわからない。だからヤングケアラーの存在自体を認識できない。
さてそんなとき、社会的属性をごちゃまぜにする(かもしれない)共生に劇場やアートが果たす役割があるのだとすれば、なんと心強いことか。
さらっとヤングケアラーという言葉をぶっこんできた芸術公社に、とても期待したい。というか、シアターコモンズの取組があったからこそ、このような企画が走り、港区の予算がつくまでに影響が及んでいるのではないか(と勝手に想像して、勝手に心強くなっている。)


さて、その港区の予算といえば、つい先日こんな発表もあった。
今年9月から10月にかけて、港区独自で「ヤングケアラーの実態調査」をおこなうそうだ。
(厚労省も過去に調査をおこなっているが、それよりも深く、小学校低学年から対象にした調査を区独自でおこなうそうである。)

〜潜在化している状況を把握し、適切な支援を!〜ヤングケアラーの実態調査を実施します! 令和4年6月1日 区長定例記者発表


おお〜港区がヤングケアラー関係に予算つけてるよ〜、とこれまた驚いた。
これは芸術公社の影響ではないけれど、ヤングケアラー対策の機運が高まってくるのは良いことである。

でもなんでヤングケアラーについて港区の予算がついたんだろう?、と不思議に思い、少し調べてみた。

そしたら公明党の港区議のツイートを発見した。



このツイートを読んで、へぇ?公明党が言ったから今回の取組がはじまったの?と若干違和感を覚えた。
よって、ヤングケアラーについての港区議会での会議録を検索してみた。
どの議員が、いつ、ヤングケアラーについて言及しているかを一覧にしてみたものが下記の表である。(私調べ)

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これを見ると、確かに公明党の丸山先生も令和3年度予算特別委員会でヤングケアラーについて言及している。
しかしもっと早く、しかも何度も言及していたのは国民民主党の議員である。
もちろん区議会においては、与党議員に華を持たせる形で質疑がされるので、この問題のように与野党問わず言及している場合、最終的なあと一押しは与党の先生のおかげですとなることは承知なのですけども。
けれど、ヤングケアラー問題は、国政では国民民主党の伊藤たかえ議員(愛知選挙区)が熱心に取り組んでいる印象が強かったので、同じ国民民主の議員が区議会で質問しているのが契機となったのは当然のように思うのである。


さて、そんな公明党の丸山先生のツイートだが、こんなものも見つけた。



おや、なんだかヤングケアラーについて伊藤たかえ議員の紹介している。
他党の議員のことを紹介するなんて珍しいこともあるものだなぁと思ったわけだ。しかし、よーく考えてみると、「伊藤たかえ」って、国民民主党だけじゃなくて、公明党にも同姓同名の議員がいる。ということは、このツイートは、公明党の伊藤たかえ議員のことを言っているのか! 国会におけるヤングケアラー問題の急先鋒といえば国民民主党の伊藤たかえ議員だと思うのだけど、頭が混乱する。


ということで、今度は国会の会議録を検索してみた。

そうすると、公明党の伊藤たかえ議員もヤングケアラーについて発言していた。同議員がはじめて発言したのが令和3年3月8日の参議院予算委員会であることがわかった。
一方で、国民民主党の伊藤たかえ議員がヤングケアラーについてはじめて発言したのが令和2年2月12日の参議院国民生活・経済に関する調査会であり、公明党の同議員の発言よりも先であり、かつその後、予算委員会や文教科学委員会等でも何度も発言していることがわかった。
ということで、やはり国民民主党の伊藤たかえ議員がヤングケアラー問題の急先鋒で間違いなし、という確証を得た。

さらにいえば、じつは国民民主党の伊藤たかえ議員よりも先に、薬師寺みちよ元議員(みんなの党→無所属)が、参議院の厚生労働委員会や予算委員会で、ヤングケアラーについてしつこく質問していたことも分かった。
国民民主党の伊藤たかえ議員は愛知県選出だが、薬師寺みちよ元議員も愛知県選出だった。党は違えど、なんか申し送りとかあったのかなぁと想像する。あるいは関心が近いところになにかあったのか。いずれにせよ愛知っ子としては誇らしい。


※国民民主党・公明党の支持者ではありません。むしろ党を問わず政治家全員がんばってほしいです。